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文字数:1143文字
ザン ザザァ
涼し気な波の音が聞える。
「ねっ、結構いい所でしょ」
雷那が別荘を指差しながら言った。
「風夢は来れなくて残念だけど、二人で思いっきり楽しもうね」
明るい声の雷那。
「うん」
「部屋に行ったら着替えて、海に行こう」
二人で泳いで楽しんでいるうちに、日は沈みかけてきた。
夜の海辺。
二人で静かに座っていた。
「冷夏、夢がある?」
沈黙を破ったのは、雷那の方だった。
「私ね、夢があるの」
空を見上げながら、雷那が言った。
そう言えば、前にそんな事を言っていたような?
「冷夏もあるでしょ?」
「別にないよ」
雷那がはっとしたように、私を見た。
「冷夏。どこかへ行かないで」
雷那が消え入りそうな声で言った。
「え?なに言って・・・」
「あ、ごめん。変だよね。冷夏が、消えてしまいそうだったから」
私が消える?
「戻ろうか?」
雷那が別荘の方に歩いていった。
「ただいま」
別荘から帰って、家に着くと誰もいなかった。
そのまま部屋に行く。
ザアアァァ
開けたままの窓から風が入ってくる。
何かの紙がバラバラになってる。
パタン
窓を閉めて、紙を集める。
何の紙だっけ?
紙に目をやってはっとした。
私の夢だったものを見つけた気がした。
夢を見た―――
妖精の夢。
過去の私がいる。
夢の妖精も
夏の光の中で・・・
かくれんぼをしていた。
「どこ?フゥーム」
「レイ。こっちだよ、早く見つけて」
―――――――――――――――――!!
目が覚めた。
涙が頬をつたう。
私と遊んだ妖精。
私を迎えに来た妖精。
私が見つけた妖精。
月明かりが入ってくる。
人影がうつる。
キィ
窓が開く。
トンッ
妖精が入ってくる。
「おいでよ。一人では、さみしすぎる」
差し出されたその手をつかめば、きっと行ける。
夢の中。苦しみも、悲しみもない世界に
行きたい!!
だけど・・・
「ごめんなさい」
行けない。
「あなたと行ければ、よかった。だけど、見つけたの。私の夢。だから、行けない」
妖精が哀しい瞳で見つめる。
わかってる。
妖精が、わたしだけをまっていたの。
私のために、ここに来たの。
「ごめんなさい」
その言葉しか出てこない。
涙が落ちる。
「なぜ、泣くの?嬉しかった。僕を呼んでくれて・・・」
サアァァァ
風が舞う。
妖精の姿が消えていく。
もう、引き止める事はしない。
「さよなら」
風の中で妖精がそう言ったようにおもえた。
「バイバイ」
過去の夢・・・。
私の悲しみが妖精を呼んだ。
夏休みが終わった。
始業式が終わって教室に戻ってきた。
「どうだった?夏休み」
雷那が聞いてきた。
「楽しかったよ。ねえ、そう言えば秋月君の姿が見えないけど?」
私はなんとなく気になっていた。
「秋月君?誰それ?」
え?
「1学期に転校してきたじゃない」
「夏休みボケ?そんな人いないよ」
そうか、彼は妖精だから、戻ったんだ。
夢の空間に
初めから、いるはずのなかった人だから・・・
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