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~時の交叉路~

小さな囁きと共に  誰かに届くように  そっと置いてみる    

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【再会】01
文字数:1732文字


  「  冷夏れいか 、今日転校生が来るんだって」
  友達の  神矢かみや  雷那らいな  がぱたぱたと廊下を走りながら、そう言ってきた。
  教室にいた私は、初夏の風になびく髪を邪魔そうにかきあげた。
 「へえ、で男?女?」
  一応聞いてみる。
 「おとこ!!しかも、結構美形!!」
  ルンルンしながら雷那が答える。
  「そう」
 男に興味なんか無かった。
 人に関わるのがいやだ。
  「何よ。冷夏ってばせっかくいい男が来たんだからもうちょっと嬉しそうな顔しなさいよ」
  私のそっけない態度に雷那がつまらなそうに言った。
  ガラリ
  「おーい、席に着け」
  バタバタとみんなが席に着く。
  先生の後ろに転校生がいる。
  あれ、何処かで見たことがある。
  転校生を見た時そう思った。
  「転校生の  秋月あきづき   風夢かざむ 君だ」
  「よろしくお願いします」
  「席は 水城みずきの後ろだ。水城、面倒見てやれよ」
  ボーと転校生の顔を見ていた私は先生の名指しにはっとした。
  「あ、はい」
  隣にいた雷那がつんつんと袖を突く。
  「ね、見とれるでしょ」
  「別にそんなんじゃ・・・・。」
  どこで見たのだろう?
  思い出せない・・・・・・。
  「冷夏、テスト取りに行かないの?」
  雷那の声にはっとした。
  私がボーとしてる間に、先生がテストを配っていた。
  教室のあちこちでざわめきがおこっている。
  「テストどうだった?」
  後ろから雷那が聞いてきた。
  「うん。まあまあかな」
  私はあいまいに答えた。   
    
  放課後・・・
  私たち2人以外、誰もいない教室。
  私は今日まで提出の雷那の課題をお手伝いしていた。
  「いつも男に興味の無い冷夏が珍しいねボーとなるなんて」
  雷那がからかい気味に言った。
  「そんなんじゃないって言ったでしょ」
  「そんなんじゃなきゃ何なのかな?冷夏ちゃん」
  雷那がツンと私の頬を突く。
  他に考えられないって眼をして私を見てる。 
  「ただ・・・・」
  雷那に言うと きっと・・・・。
  「ただ  何?」
  「見たことがあるような」
  きょとん とした眼で雷那は私を見た。
  「見たことがあるってあの転校生?」
  「うん」
  「なーんだ、やっぱり気があるんじゃない。それとも、前世で出会ってた とか?」
  雷那は、ケラケラは笑い出した。
  やっぱりそっちの方に話を持っていくか・・・・。
  「そんな事言うなら手伝わないよ」
  ちょっとムッとしていった私に
  「えーん。秀才の冷夏の頭が無いとこんなの終わらないよ」
  雷那がすがりついてくる。
  「はいはい。それより、手を動かそうね」
  「楽しそうだね。何してんの」
  急に声がして振り返ると転校生がいた。
  「今、秋月君の話してたの。秋月君は何しにきたの?」
  転校生の方を見ながら雷那が答える。
  雷那の顔はルンルンしてる。  
  「僕は忘れ物を取りに来たんだ。  あれ、それって課題?」
  転校生が机を覗き込んできた。
  「そう。雷那が今日までにやってこなかったから、手伝いしてるの」
  雷那が、何で余計な事言うのって眼で見てる。
  「へえ、手伝ってあげようか」
  「もう終わるから」
  私はそっけなく答えたつもりだった。
  「それなら一緒に帰ろう」
  え?
  「ボディガードがわりにはなるだろ?」
  たしかに外はもう薄暗くなっているけど・・・・。
  このひとの方が危ないと思う。
  「送ってってくれるの?嬉しい」
  私が答えるよりはやく、雷那が答えた。
  ま、いいか・・・。
  
  「でね、冷夏ってね・・・」
  雷那の家は、私の帰り道の途中にある。
  雷那は、その家までずーとしゃべり続けていた。
  「あ、私の家ここなの。じゃ、また明日ね」
  雷那が別れ際、私に耳打ちした。
  「彼はダメだよ」
  真剣な眼差しが私をとらえる。 「何が?」
 「つまり、彼に近づかないでねって事」 急にふざけた調子に変わる。
  ・・・・・・・・・・・・・ 
  二人っきりになったらシーンとなってしまった。
  家に着くまで何もしゃべる事がなかった。
  「あ、家ここだから。じゃ」
  パシ
  家に入ろうとした私の手を転校生が、しっかりと捕まえていた。
  「なに?」
  「忘れてしまったの?約束」
  彼の悲しい目が私をとらえる。
  子供のようなその瞳。
  そう、この瞳。見た事ある――。
  いつ?
  いつだったかしら?
  サアァァァ
  風が、通りぬける。
  その風の中に、すい込まれていきそうな彼の姿。
  消えてしまうのかと思った。
  「ごめん」
  そう言って手を放した。
  「じゃ、また明日ね」
  彼は、笑って風の中をかけていった。
  私はいつ、彼に会ったのだろう――。

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