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≪子供の頃は?≫ 編
【だあれ?】
ザワザワ
樹が風に揺れて、鳴いている。
その樹の下で、私は一人で遊んでいた。
ボールがポンポン跳ねる。
ザアァァ
強い風が吹いた。
「キャ」
髪が顔にあたって、目の前がまっくら。
あれ、ボールない?
あ、あった。
樹のそばに転がっている。
あれ?
「だあれ?」
樹のそばに人がいる。
いつからいたんだろう?
男の子? 女の子かな?
その子は、ボールを拾ってくれた。
「はい」
そして、私に渡してくれる。
変わった瞳の色・あお?翠かな?
・・・・・・。
「一緒に遊ぼう?」
一人じゃつまらなかった。
「うん」
わぁ
ニッコリした顔がかわいい・・・
「ねぇ、名前なんて言うの?」
「なまえ?」
?
なぜそんなに哀しそうな瞳をするんだろう?
まるで聞いちゃだめなことみたい・・・。
「なまえ・・・。忘れちゃった・・・・」
名前がないのかな?
「ふーん?それじゃぁね。 『フゥーム!!』ママに読んでもらった妖精の名前なの」
「うん・・・。それでいいよ」
きらきら光る瞳で、笑ってくれた?
「あたしね。レイカ」
「レイ?」
「うん。レイでいいよ」
それがフゥームとの出会いだった。
それから、毎日フゥームと遊んだ。
かくれんぼや、鬼ごっこ、かげふみ・・・・
夏の木漏れ日の中
あの樹の下で二人でお昼寝
二人でいつも一緒に・・・・・
いつまでも、そのままならよかったのに―――
「ひっく、ふええぇぇぇん。ア―・・・・エッッ」
一人でベットで泣いていた。
夜だった。
それなのに、フゥームは来てくれた。
カタン タン
「ひっく、だあれ?」
部屋に誰かが入ってくるのが分かった。
「ぼくだよ」
その声は・・・
「フゥーム!!」
私は、フゥームに抱きついた。
フゥームに会いたかったの・・・
「何で泣いてるの?」
「ふぇ・・・。だって、引越すことになったの。そうしたらもう、フゥームに会えないもん」
フゥームがポンポンって頭をなでてくれた。
「遊ぼうか?あの木の下で」
?
「うん?」
「しっかり、つかまっていて」
???
「ふわあぁぁぁぁ」
フゥームが私を抱いたまま、窓から飛び降りた。
フワッ
けど、身体はゆっくりと地面に降りて行く。
「フゥーム、すごーい!!」
「遊ぼうよ」
フゥームが、ニッコリしてくれる。
「うん!!」
私もつられて、ニッコリする。
「キャハハハハ」
「フフフフ・・・・・」
樹の上にフゥームが隠れてる。
「フゥーム、みーつけた」
わぁ
キレイ・・・。光が、フゥームとたわむれてる。
トンッ
フゥームが降りてきてくれる。
「もう、戻ろうか?」
え?
「まだ、遊ぼうよ」
だって、まだフゥームといたい・・・。
「だめだよ。だってもう時間がないから・・・」
フゥームは、そういって困ったような顔をする。
「だって、・・・だって。・・」
「泣かないで、約束するから」
泣き出した私をなだめるように優しい声で、フゥームは言う。
「約束?」
「レイが、呼んだらきっと迎えに行くから・・・」
優しい瞳・・・
「本当?」
「うん。だって、レイはぼくを見つけてくれたから」
そう、言ったフゥームの瞳はあまりにも哀し気だった。
ザアアァァァァ
月がフゥームを包む。
消えてしまう・・・
まって・・
待ってよ。フゥーム!!
目が覚めた。
あれは夢?
夢だったのかな・・・・・
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