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文字数:634文字「キャハハ」「クスクス」「オーイ。コッチダヨ」子供の声が聞こえる。楽しそうな笑い声。走りまわる足音。小さな子の泣き声。ああ、私もこんな時代があったっけ?違う。私は、人と遊べない子だった。いつも一人遊び。みんなでやるすべりだいより一人っきりのブランコが好き。みんなでやる鬼ごっこより一人っきりの本読みが好き。みんなと走りまわるのなんか嫌い。みんなで一緒に遊ぶのも嫌い。私、いつもそうやってたような気がする。一人で壁にへばりついて、ずっと外を見てたような気がする。誰にも関わらない。そうやってきたような気がする。『そんなに何も言わないでいるなら、人形になってしまうよ』って言ったのは保育園の先生だった。そんな頃から何も言わなかった?泣いた事ってあった?笑った事は?私はどんな顔してた?わからない。だって、自分の顔はいつも見えない。「ネエ、コッチ手伝ッテヨ」誰?あれは誰だった?知ってるような声が聞こえたのに、私には思い出せない。友達だった様な気がする。私を傷つけた友達。私は何故傷ついたんだっけ?そうだ、約束をしたんだ・・・。それで、その約束が破られて・・・約束?破ったのは友達だった?ちがう。私が取り残されただけ。私が行かなかったから。私が聞かなかったから。約束を破ったのは私?それとも、友達?どんな約束だった?思い出せない・・・。何かを忘れてるのに。約束を?違う、思い出したいのは約束なんかじゃなくてそんな事なんかじゃなくて・・・じゃあ、一体何を思い出したいんだろう?
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文字数:576文字あれ?私、死んだのかな。辺りは一面真っ白。でもそこに一本の木がある。桜?白い花びらが落ちてきてる。手を伸ばし花びらを1枚受けとめてみる。違う。鳥の羽根・・・私はなんの鳥だろうと上を向いた。逆光の中に人陰が映る。上で輝いているのは太陽ではないようだ。もう少し、柔らかい光。なんだろう?目がなれてきた頃。木の上の人物が話しかけてきた。「どうしてここに来たの?」え。天使だ。なぜそれまで気付かなかったのか人に翼が生えている。そっか。やっぱり私死んじゃったんだ。「あなた、名前は?」また、その天使が話しかけてきた。「私は・・・」!なぜか自分の名前が言い出せなかった。いや、忘れているわけではない。ただ、その言葉を口にできなかったのだ。「どうしてここに来たのかわかる?」天使はもとの質問に戻した。「死んじゃったからでしょ」私は冷静に答える。「どうして死んだの?」天使の表情は見えないはずなのになぜか微笑んでいる様な気がした。「手首を切ったの」「なぜ?」「なぜって・・・」私はそこでわからなくなった。私はなぜ自殺したんだろう?そうしなければならないと思ったのはなぜなんだろう。天使は微笑んでそこにいる。ただ微笑んでいるだけなのに、それが私を安心させた。「少し、疲れてるんだね」羽根はヒラヒラと舞い落ちる。何か考えなきゃいけないのに。全てを忘れろと言うように・・・・
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文字数:855文字それが予感だったのか。それとも、偶然だったのかは知らない。だた、そうしなければならないような気がしていた。寒い日が続く冬のある日。その日は晴れていて暖かかった。ちょっと外に出る気になった。日差しは暖かく降り注いではいるが、風はやはりまだ寒い。コートとマフラーをして外に出る。街角で見つけた雑貨屋さん。何気なく入ってみる気になった。カランカラン・・・中にはいろんなものがある。ランプに人形、アクセサリーに文房具。その中で、私の目に留まった物があった。銀色に輝くナイフ。あまり飾りのないシンプルな物だ。「気に入りましたか?」急に声をかけられた。ふと、目を上げる。どうやら、ここの店主らしい。エプロン姿で、優しげな瞳をしている。髪は少しウェーブのかかっていて後ろで一つにまとめている。男か女か分からない中性的な雰囲気だ。私が何も言わないでいると店主はこう続けた「これを持った人は皆、不思議な体験をしてるんですよ」私はそのナイフに惹かれていた。そのシンプルな銀の輝きもよかったが何よりも惹かれたのは、不思議な体験をするという店主の言葉だった。「あの、これいくらですか?」少し高かったが結局買ってしまった・・・ちょっと高い買い物だったかな。でも・・・これで、きっと――その日からしばらく晴れた日が続いた。雪は解けて地面が見え出していた。でも、またそれを覆い隠そうとする様に雪は降り出してきた。私は、雪の中をさまよい歩いていた。ちょっとしたことで母と言い合ってしまった。そのまま家を飛び出してきたのだ。なぜか手にはあのナイフが握られている。何だか、もうどうでもいいかも・・・ちょうど雪の中だし・・・いつも思っていた。死ぬのなら雪の中。手首を切るのがいい。枕になりそうな木もあるしうん。いいかもしれない。こいうのを運がいいとはいわないのかも知れないが、私はそう思ってしまったのだ。木の根っこに腰掛ける。幹に体を持たれかけ、一気に手首を切った。白い雪に紅い血はとてもキレイだった。思った通り。そう、と・・て・・・も・・・・・。
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