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文字数:886文字ガラッッえ゛?嫌な予感がした・・・。案の定、足元が崩れ落ちてゆく。ザッザザアアァァァァ天と地が回転する。周りの石や砂と一緒に、落ちてゆくのがわかった。あちこちに痛みが走る。そして、後頭部が激痛におおわれる。覚えていたのは、そこまでだった・・・・・。夢を見た―――人魚の夢。水の中に人魚がいる。ゴポッゴポッ僕は静かに沈んでいく。このまま沈んで、死ぬのかな・・・。人魚が僕の手をつかまえる。「もう、大丈夫よ」――――――――――!!目が覚めた。あの夢は、何なんだ?何で人魚なんか・・・ぼやけていた頭がだんだんはっきりしてくる。ここは?結構、古びた家の中みたいだ。僕は、部屋の真ん中に敷かれた布団に寝ていた。イタッ!動こうとするとあちこちが痛んだ。手や足に包帯が巻いてある。「目が覚めたみたいね」女の子の声が聞こえた。振り向くとそこにいたのは人魚・・・じゃない・・・人間だ。ちゃんと足がある。あの夢の人魚そっくりの 女の子。クルクルのまき毛。クリンとした大きな瞳。黒い髪に、青い瞳?ハーフ?「大丈夫?あの崖から落ちたのでしょう?」え・・・と僕は一生懸命、頭の中を整理する。崖?この町に引っ越してきたばかりで――家の中より外のほうが気がまぎれると思って ・ ・ ・朝の散歩に森の中に入って・・・それで?そうだ、足元が崩れて落ちたんだ。「ねえ、名前は?」黙ったままの僕に、女の子が聞いてきた。!!僕は誰なんだ?名前が思い出せない―――「どうかしたの?」女の子が僕の顔をのぞきこむ。「僕は誰?思い出せないんだ」不安そうに聞いた僕に、その子は笑って答えた。「それじゃあね。あなたを『カイ』って呼ぶわ」カイ?それが僕の名前?「君は、誰?」「私の名前は
深織 」みおり?やっぱり、あの人魚と似てる・・・やさしい声が。ここは、暖かい―――なんだか、とても眠い「もう大丈夫。ここに居て、いいから」やっぱり,この子は人魚なのかな?そう言えば、人魚姫って童話があったような ・ ・ ・沈む意識の中で、ぼんやりと僕はそう思った。ザン ザザアァァン―――・・・・・・・―――PR -
文字数:1143文字ザン ザザァ涼し気な波の音が聞える。「ねっ、結構いい所でしょ」雷那が別荘を指差しながら言った。「風夢は来れなくて残念だけど、二人で思いっきり楽しもうね」明るい声の雷那。「うん」「部屋に行ったら着替えて、海に行こう」二人で泳いで楽しんでいるうちに、日は沈みかけてきた。夜の海辺。二人で静かに座っていた。「冷夏、夢がある?」沈黙を破ったのは、雷那の方だった。「私ね、夢があるの」空を見上げながら、雷那が言った。そう言えば、前にそんな事を言っていたような?「冷夏もあるでしょ?」「別にないよ」雷那がはっとしたように、私を見た。「冷夏。どこかへ行かないで」雷那が消え入りそうな声で言った。「え?なに言って・・・」「あ、ごめん。変だよね。冷夏が、消えてしまいそうだったから」私が消える?「戻ろうか?」雷那が別荘の方に歩いていった。「ただいま」別荘から帰って、家に着くと誰もいなかった。そのまま部屋に行く。ザアアァァ開けたままの窓から風が入ってくる。何かの紙がバラバラになってる。パタン窓を閉めて、紙を集める。何の紙だっけ?紙に目をやってはっとした。私の夢だったものを見つけた気がした。夢を見た―――妖精の夢。過去の私がいる。夢の妖精も夏の光の中で・・・かくれんぼをしていた。「どこ?フゥーム」「レイ。こっちだよ、早く見つけて」―――――――――――――――――!!目が覚めた。涙が頬をつたう。私と遊んだ妖精。私を迎えに来た妖精。私が見つけた妖精。月明かりが入ってくる。人影がうつる。キィ窓が開く。トンッ妖精が入ってくる。「おいでよ。一人では、さみしすぎる」差し出されたその手をつかめば、きっと行ける。夢の中。苦しみも、悲しみもない世界に行きたい!!だけど・・・「ごめんなさい」行けない。「あなたと行ければ、よかった。だけど、見つけたの。私の夢。だから、行けない」妖精が哀しい瞳で見つめる。わかってる。妖精が、わたしだけをまっていたの。私のために、ここに来たの。「ごめんなさい」その言葉しか出てこない。涙が落ちる。「なぜ、泣くの?嬉しかった。僕を呼んでくれて・・・」サアァァァ風が舞う。妖精の姿が消えていく。もう、引き止める事はしない。「さよなら」風の中で妖精がそう言ったようにおもえた。「バイバイ」過去の夢・・・。私の悲しみが妖精を呼んだ。夏休みが終わった。始業式が終わって教室に戻ってきた。「どうだった?夏休み」雷那が聞いてきた。「楽しかったよ。ねえ、そう言えば秋月君の姿が見えないけど?」私はなんとなく気になっていた。「秋月君?誰それ?」え?「1学期に転校してきたじゃない」「夏休みボケ?そんな人いないよ」そうか、彼は妖精だから、戻ったんだ。夢の空間に初めから、いるはずのなかった人だから・・・
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文字数:1937文字
しばらくは何も無かった。妖精の事など忘れていた。夢も見なくなっていた。期末テストが近づいていた。「冷夏、あたりそうな所教えて」雷那が、いつも通りすがってきた。テストが近づくと、いつもこれだ。「雷那、人をあてにしないでたまには自分で頑張ったら?」私は意地悪っぽく言った。「ひどーい。この時期にそんな、余裕あるわけないじゃない」「どんな余裕がないの?」彼が、話に入ってきた。「風夢、冷夏ってすごいのよ。いつもテストに出そうな所がわかるの」雷那は、転校生の事を『風夢』と呼ぶようになってた。「そんなの、先生の話を聞いてれば、だいたいわかるよ」「えー、そんなこと無いよ」「僕も、知りたいな。テストに出る所」う゛っ二人して『教えて』の目をして私を見る。「わかった。教えてあげるわよ」「サンキュ。冷夏」あまり自信無いんだけどな・・・。この前もあまり―――。終業式が終わった。外で、セミが鳴いている。「明日から夏休みだ―――」教室に戻ってきた雷那が、背伸びをしながら言った。「そうだね」蒸暑い教室で、下敷きをパタパタしながら答える。「夏休み予定ある?」雷那が、聞いてきた。「別にないけど」「それなら、家の別荘に来ない?」え?「別荘なんてあったけ?」「親戚の人に、今年だけ貸してもらえるの。くる?」別荘かぁ。どうしようかな・・・。「海のそばで、眺めもいいよ。風夢も来るって」「いこうかな」ガラリ先生が入ってきた。「ほんと?じゃあ、夏休みになったら、連絡するね」雷那は慌てて席に着いた。予定なんかないから、いいか。ざわざわ先生が成績表を配り出した。「冷夏どうだった?」雷那が、自分の成績表を見ながら聞いてきた。「・・・・・・」私は、成績表を眺めたまま何も答えなかった。「冷夏?」雷那が、成績表から目を上げた。「え、あ、まあまあかな」成績表をしまいながら答える。「まあまあか。私はだめ」ため息を吐きながら、雷那は言った。「次は、もっと頑張れば?」後ろで話を聞いていたらしい、彼が話に加わって来た。「そう言う、風夢はどうだったのよ?」「僕?前と変わらないよ」ニッコリとそう言って、成績表を見せてくれた。え?順位の所に『1』と書いてある。「ちょっと、これじゃ、上がりようがないじゃない」雷那がピキッて切れそうなのがわかる・・・。「そうみたいだね」ニッコリとしてる彼を見て、雷那が切れてしまった。彼の胸ぐらをぐっと掴んでぶんぶん振った。「何へらへらしてんのよ!!私と一緒に冷夏に聞いてたくせに、どうしてこう違うのよ」「自分で頑張らないと、よい結果はでないんだよ」雷那が、ピタッと振るのをやめた。図星を指されて何も言えなくなったのだろう。ぷいっとそっぽを向いてしまった。「嫌われたかな?」彼がつぶやいた。「大丈夫よ。明日になれば忘れてるから」私は、それとなく答えた。夢を見た―――妖精の夢。子供の私がいる。そして妖精も夏の日差しの中、二人で遊んでいる。あれは、引越しする前の日だった?「やくそく?」私と妖精、二人で・・・。「うん。約束」約束をした。―――――――――――――――!!目が覚めた。涙が溢れ出る。そうだ、あの日・・・妖精はこれを待っていたんだ。私が約束を思い出すのをだから、妖精は私の前に現れた。約束のために―――月が出てる。キィ窓が開く。トンッ妖精が、部屋の中に入ってきた。今度は、今の姿で。「やっと、思い出した?」私を見つめるその瞳は、昔と変わらない。「うん。約束したよね」あの時、二人で交わした約束・・・・。『僕を呼んで。君が望むなら、―――』「迎えに行くよ」そう言って、妖精は私に手を差し伸べてくれた。止まりかけた涙がまた溢れてくる。「連れてって!!ここはもう、いやなの!!お願い!!連れてって!!!」泣きながら叫ぶ私を、彼は静かに抱きしめてくれた。なぜだろう?ほっとする。彼の腕の中が心地いい。コンコンはっとした。「冷夏?どうしたの、大きな声だして」お母さんの声だ。カチャ慌てて、ドアを開けた。「なに?」「何って。今大きな声がしなかった?」お母さんが不振そうに部屋の中を見渡した。「あ、ラジオだよ。ちょっと間違えてボリューム大きくしちゃったから」「そう?それならいいけど・・・。早く寝なさいね」「はーい」お母さんは、部屋に戻っていった。パタン振り返るともう、妖精はいなくなっていた。「フゥーム?」呼んでも返事はない。あれから、何度か妖精の夢を見た。昼も夜も関係なく。でも、暑くてすぐ目が覚めてしまう。夢の中でしか、妖精に会えなかった。目が覚めると、そこに妖精の姿はなかった。私が呼んだ妖精。連れてってくれるよね?約束守ってくれるよね?私が望めば、連れてってくれるって約束したもの。