×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
文字数:1713文字
【記憶】
夢を見た―――
罪人の夢。
「ウォルト、ねえウォルト」
いつも、ウォルトの傍にいたかった。
「ウィリア、いつも言ってるだろう俺は忙しいんだ。遊び相手なら他をあたるんだな」
「そんな冷たい言い方しないでよ。乳母の目を盗んでここまで来るの大変なんだから」
私の家はこの辺りを治める領主だった。
「だったら来なけりゃイイだろう」
ウォルトは農民の息子。
身分違いなのは誰が見ても一目瞭然。
「ウォルト、喋ってる暇があるなら手伝え!!」
向こうでウォルトを呼ぶ声が聞こえる。
ウォルトは私の方を振り向きもせず行ってしまった。
しかも私の片思い・・・
「お嬢様、またこんな所に来て!」
まずい・・・
乳母に見つかってしまった。
「いいじゃないのよ。ちょっとぐらい」
「いいわけありませんよ。こんな事がだんな様の耳に入ってごらんなさい。私までなんと言われるか」
ああ、また小言・・・
「さあ、もう戻りましょう」
「はーい」
私はいつもどうしたらウォルトが振り向いてくれるか、そればかりを考えていた。
でも・・・
私は今日も館を抜け出してウォルトを探していた。
そして、ウォルトが木の影にいるのを見つけた。
「ウォルト、やっと見つけ・・・」
誰か、女の子と一緒にいる。
あの子、確か村のはずれに住んでる『魔女』
赤い目のあの子を村人はそう呼んでいた。
あんな風にウォルトが笑っているところなんて見たことない。
「ウィリア様!」
その子は私に気づくとそそくさとその場から逃げ出した。
「ウォルト誰、あの子?」
あんな何もとりえのないような子が何でウォルトの傍にいるのよ!!
「お前に関係ないだろう」
冷たい一言。
そう言ってその場から離れていこうとする。
「待ってよ。あの子誰なのよ!私に黙ってあんなに親しそうに」
「おれが人と話すのに、あんたの許可がいるわけ?お嬢様」
!!
ウォルトは私の手を振り払って行ってしまった。
何よ。私にはあんなに楽しそうに笑わないくせに、私にはあんな風に・・・
――――――――――
その日から私はあまり外に出なくなった。
帰ってきたお父様の顔がなんだか曇っていた。
「どうなさったの。お父様?」
私はお父様のそばに近づいて聞いた。
「ああ、ウィリア。最近、雨が降らないだろう。それで作物が実らなくて困っているんだ。
おまけに変な疫病まで流行り出している」
そんな事になっているなんて知らなかった。
「まあ、それは大変ですわね」
「全く、悪魔でもいるんじゃないだろうか」
それはホントに出来心だった。
「悪魔?」
「ああ、誰かが悪魔と契約でもしているんじゃないかと思うよ」
少し、ウォルトを困らせてやりたかっただけ。
「そういえば、村のはずれに住んでいる『魔女』が夜中に何かこそこそと森に行くのを見かけたけど
もしかして、悪魔でも呼び出していたのかしら?」
「なんだって、本当か!!」
お父様がきつく腕をつかんできた。
「え、ええ」
その言葉を聞くとお父様は家を飛び出していった。
悪魔なんて信じていなかった。
だから、私の言葉があんな出来事を引き起こすなんて考えもしなかった。
その夜の事だった。
「魔女を、悪魔を逃がすな!!」
その声に目が覚めた。
魔女狩りが始まっているんだ。
私はそっと外を覗いてみた。
もちろん外は暗くてよく見えない。
たいまつの火が所々に見えるだけ。
明日になればウォルトも私だけを見てくれる。
『魔女』はもういないんだから。
朝になるとお父様が帰ってきた。
私は急いで、お父様のいる部屋へ行った。
「まあ、それじゃあ。ウォルトも崖から落ちて?」
お母様とお父様の話し声が聞こえる。
何?ウォルトがどうかしたの?
「ああ、きっと死んでしまっただろう」
死?
「お父様、ウォルトがどうかしたの?」
私は部屋に入るなり聞いた。
「ウィリア、奴も悪魔の手先だったんだ。『魔女』と一緒にいたのだから」
一緒に?まさか・・・
「それで?」
「あれじゃあ助からない。崖から落ちて・・・」
!!
その後どうやって自分の部屋に戻ったのか覚えていない。
ウォルトが?
違う!!私が望んだのはこんな事じゃない。
私は、ウォルトが振り向いてくれればそれでよかったのに
どうしてこんな事になってしまったの。
私のせい?
私がつまらない嫉妬なんてしたから?
ウォルトを殺してしまうなんて!!
PR
コメント